July 12, 2005

そんな目で見ないでくれ

6月終わりごろのとある週末

 午前中の打合せを終えて、家に帰る道すがら、昼飯を取ろうと日進市にあるお気に入りのカフェに立ち寄った。朝飯をしこたましっかり食べたので、さほど空腹ではなく、アイスコーヒーとサンドイッチをオーダーし、適度に暑いくらいなので、テラスのテーブルで食べることにした。テラスには心地よい風が吹いていて、この席を選んで正解だったよと幸せな気分に浸れてしまう、我輩の限界の低さよ。
 サンドイッチを頬張りながら、溜め込んでいた建築雑誌(隙間の時間に読めるよういつも持ち歩いている。故に我輩のバッグは不要に重い)に目を通して昼飯時を過ごしていた。
 のだが
どうもさっきから視線を感じる気がして仕方ない。ふと自分の視線を上げてみると・・・・・・dont-look2-1
我輩の左手のサンドイッチを じっと見つめる犬と目が合った。このカフェはテラスのみペットOKなのである。飼い主は歓談に花を咲かせ、愛犬のことはお留守のようだ。奴の前には水のボールがあるのみで食事は与えていない様子、確かに犬の餌は決められた時間にあげるのみとするのが通例であり、かつて我輩が飼っていたシェパードの時もそうしていた。
 
それはあくまで人間の勝手であり、奴らにしてみれば、美味そうなものが目に入ればゴクッとつばを飲み込むのである。奴の視線はまさに、
「あのよー、一口でええもんでよー、あんたのその左手にあるものを分けてちょーす」と我輩に訴えかけてくるのである。
 我輩、左手を見ながら
「いやいや、拙者が飼い主ならいざ知らず、貴殿の飼い主のお許しなきに、お分け出来かねぬ故、どうぞこの場はお許し願えぬか」

と奴の目を見つめ返すのだが、奴の目線は益々まるまると輝いていくのである。お願いだから そんな目で見ないでくれーーー 
 我輩の葛藤を尻目に、飼い主とお仲間は歓談に夢中である。
「ええいっ 貴殿の願い、叶えたいのは山々なれど、武士の情けここは一つ目をつぶって下され」
と、我輩、最後の一口を頬張ったのである。
その一部始終を目の当たりにした奴の目は
「なんだーいかんわー、おみゃーさん食ってまったんかー、ちょこっとでよかったのによー、まー知らんわー」
とでも言いたげに踵を返すと、我輩に背を向けたのである。DVC00030 初夏のとある週末のカフェのテラスの出来事。友人をひとり失ってしまった気分である。

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